ブロッコリーの栽培

 ブロッコリーは地中海沿岸部が原産地で、日本には明治時代に伝わりました。1980年代以降にブロッコリーの栄養価が認識され始め、作付面積も拡大し急速に普及が進みました。それに伴い、さまざまな地域や季節での栽培・収穫を可能にするために、育種が進められました。弊社商品においても、周年供給に対応した栽培を容易におこなうために、播種後90日で収穫となる早生種から、200日で収穫となる極晩生種まで揃えています。また、花蕾に紫色(アントシアン)の着色が無いアントシアンレス種は、寒さの厳しい時期でもきれいな緑色のブロッコリーを収穫することができます。


 ブロッコリーは緑植物春化型の作物で、株がある一定の大きさになってから一定期間低温に当たると花芽分化が始まり、その後収穫部位である花蕾の形成に至ります。早生種は低温感応に敏感で、晩生種になるほど鈍感になります。低温の要求度は、一般的には早生種で本葉6〜8枚以上で19〜22℃以下、中生種で本葉9〜11枚以上で16〜18℃以下、晩生種で本葉12〜15枚以上で12〜15℃以下となります。花芽分化に必要な低温遭遇日数は4〜5週間程度と言われています。また、分化する花芽の数は低温に感応したときの株の大きさに比例します。ボリュームのある花蕾を収穫するためには、花芽分化までに株をしっかりと作ることが大切です。


秋冬どり栽培

 秋冬どり栽培はブロッコリーの生育特性に合った作型となります。年内どりでは早生種、年内から年明けどりでは中生種、年明けどりでは晩生種を使用し、適期に播種を行うようにします。

播種・育苗

 播種・育苗には、地床育苗とセルトレイを利用した育苗があります。最近では栽培管理が容易なセルトレイでの育苗が一般的です。セルトレイの大きさは128穴が標準的です。播種用土には市販されている物理性の良い用土を利用すると便利でしょう。自前で播種用土を準備する場合には土壌消毒を行い、育苗期での病害発生を防ぐようにします。家庭菜園などで少量の育苗をする場合には育苗箱などにばら播きし、9pポットに植え替える方法もあります。

 播種後は十分に潅水を行い、発芽するまで用土を乾燥させないように注意します。特にコート種子はコート内の種子まで水分を行き渡らせるために、裸種子より多めの潅水が必要となります。発芽適温は25℃前後であるため、それ以上になる場合には遮光を行うなどして地温を下げるようにしましょう。

 育苗には適正な水、温度、酸素、光を与えることが重要です。日当たり、風通しの良い場所で育苗を行うようにします。セルトレイは育苗棚などに置き、地面から30p以上あけて風通しを良くし、健全な根の生育を促します。育苗中の潅水は1回の潅水量を十分に行います。少量で多回数の潅水は、苗が徒長しやすくなるため注意して下さい。夜間に過湿となると苗が軟弱徒長しやすいため、潅水は午前中に行うことを基本とし、夕方には表土が軽く乾くようにします。日中は温度が上がり過ぎないよう十分に換気を行うとともに、強い直射日光を避けるために遮光を行います。晴天時の10〜15時ごろを目安とし、過剰な遮光による苗の徒長に注意しましょう。

 育苗用土の種類によっては、育苗期間中に肥料が切れてくることがあります。必要に応じて液肥を施し、定植まで肥効を持続させて下さい。

定植準備・定植

 ブロッコリーは日当たりが良く、排水性の良い圃場を好みます。排水性の悪い圃場では高畝にするなどの排水対策が必要となります。堆肥は定植の約1ヶ月前に施し、苦土石灰は約2週間前に、化成肥料は約1週間前にまでに施します。早生種は栽培期間が短く、生育期間の気温も比較的高いため肥料が有効に吸収されます。気温が高い時期に収穫する作型では窒素量が多いと草勢が強くなりすぎて花蕾形状の乱れ、粒の不揃いが発生しやすくなる場合があります。また、窒素過剰で微量要素のホウ素の吸収が阻害されると、茎の空洞症やカサブタ症状が発生することがあるので注意をします。晩生種は収穫までの期間が長く気温も低くなるため、早生種の場合よりも肥料を多めに施します。施肥設計は花蕾の品質に大きく影響します。土壌診断を行い、有機質肥料を利用するなどバランスの取れた土作りを行うことが重要です。

秋冬どり栽培(時期別施肥量の例)

 定植の適期はセルトレイ育苗の場合で、播種後25〜30日程度の本葉3枚前後となります。育苗期間が長くなり老化苗になると定植後の活着が悪くなるため適期での定植を心がけましょう。栽植距離は条間60〜70cm、株間32〜35p程度を基準とし10a当たり4,000株から5,000株程度を目安とします。栽植本数が多すぎると、風通しが悪くなることで病害が発生しやすくなり、また生育も不揃いになることがあるため過度な密植は避けるようにします。高温時は高温になる時間帯を避けて定植を行うと活着が良くなります。定植後は潅水を行い、活着を促すようにしてください。

定植後の管理

 追肥、中耕、土寄せ、薬剤散布などを適切な時期に行い、健全な生育を促しましょう。1回目の追肥は定植から2〜3週間後に、成分量で窒素3〜4s、カリ3〜4s程度を施します。追肥は一度に量を多くやるよりも、少量で回数を多くすると効果が上がります。2回目の追肥は、1回目から2週間後位に生育や葉の色を見て調節します。追肥と合わせて中耕と土寄せを行うと生育も促進され、除草効果もあります。中耕、土寄せは追肥時以外にも、降雨後に土壌が固くなり根への酸素供給が不足した場合など適宜行うようにします。ただし、株が大きくなってからの中耕は、根を傷めてしまい逆効果になる場合があるので避けて下さい。

 病害虫は初期の予防を中心とした防除を徹底すれば被害が少なくてすみます。農薬の使用に関しては、用法や用量、登録の有無などを必ず確認して下さい。

収穫

 花蕾の大きさ(直径)が12〜15pになった頃に収穫を行います。過熟になると花蕾の形状が乱れ、高温期には死花が出る場合もあるので、適期収穫に努めます。ブロッコリーは花蕾の呼吸量が多いため、収穫後の品質低下の早い野菜です。気温の低い時間に収穫すると品質保持の点で有利です。気温の高い時期には品質保持のために予冷や保冷も必要となります。また、ブロッコリーは花蕾だけでなく茎の部分も栄養が多く含まれており、美味しく食べることができます。茎の皮の固い部分をむくと調理もしやすくなります。

春まき初夏どり栽培

 春まき初夏どりの作型は、播種から生育初期にかけては低温期で、花蕾形成から収穫時期にかけては気温上昇期となります。ブロッコリーの生育特性上、栽培難度が高い作型になります。この作型では早生種から中生種が適していますが、早生種になるほど低温に敏感なため早期出蕾(ボトニング)への注意が必要となります。晩生種は生育期間が長いため初夏どりには不向きです。「プライム」、「すばる」、「ファイター」、「まどか」、「緑竜」、「サミット」がこの作型に適しています。

播種・育苗

 播種時期が低温期になるため、地温を確保することが重要です。電熱線等を利用し加温を行い、苗床の気温が日中20〜25℃、夜間は10℃以上となるように管理し、発芽を促します。育苗は日当たりの良い場所で行い、被覆資材を使用する場合にもできるだけ日光を遮らないものを使用します。低温、低日照は芯止り(ブラインド)発生の一因となるため注意をします。育苗日数は環境にもよりますが40〜50日前後となります。本葉3.5〜4枚程度になれば定植ができます。暖かい苗床から、急に気温の低い本圃に定植すると強いストレスを受けるため、活着の遅れや早期出蕾(ボトニング)の原因となります。苗床では徐々に温度を下げ、定植の3日前位には外気にあて外の環境に馴らす作業を行うと良いでしょう。

定植準備・定植

 堆肥は定植の約1ヶ月前に施し、苦土石灰は約2週間前に、化成肥料は約1週間前までに施します。施肥量は栽培時期、前作の残肥等によって決めるようにします。元肥で10a当たりの成分量で窒素15s、リン酸18〜20s、カリ15s程度を基準とします。マルチを使用する場合には定植の前日までに設置し地温の確保を行うと活着の促進につながります。

 平均気温が10℃程度になれば無被覆での定植が可能です。ソメイヨシノの開花が目安となります。定植後、気温が低い場合には早期出蕾(ボトニング)の危険があるので注意が必要です。地域によりますが4〜5月に収穫を行うには被覆資材で保温をする必要があります。被覆栽培をする場合は、定植したその日のうちに被覆するようにします。栽植距離は条間60〜70cm、株間32〜35p程度を基準とし10a当たり4,000株から5,000株程度を目安とします。

定植後の管理

 生育初期は気温が低く、生育がゆっくりとなるため、この時期に停滞しないように管理することが重要です。老化苗での定植をさけ、植え傷みが少なくなるように心がけてください。定植後は必要に応じて活着を促進させるために潅水を行って下さい。潅水は日中の暖かい時間に行なうようにします。トンネル栽培の場合、内部の温度は25℃以上にならないように換気を行います。栽培期間の後半は地温が上がり、肥料が吸収されやすくなります。花蕾肥大期に急激な肥効があらわれると花蕾形状の乱れや蕾粒の不揃いが助長される場合があるので、追肥量に注意して下さい。

収穫

 3月中〜下旬頃に定植した場合、定植後60〜70日程度で収穫時期となります。収穫の適期が秋冬どりの場合よりも短くなるため、取り遅れには十分に注意をして下さい。気温の低い午前中に収穫を行って、収穫物の温度を上げないようにして品質の保持に努めます。

品種特性表
適応一覧表